ベル姫様と溺愛ナイト様
「姫、いかがなされました?!」

「思い……出した……」

「ベル……?」

ベルが突然立ち上がり、かたりと椅子が倒れた。

「レイ、レイ、わたし、貴方を忘れてしまっていた……!
ごめんなさい、ごめんなさい……!」

ジェミロは目を見張った。

奥手なベルが。
色恋沙汰のひとつもなかったあのベルが。
どんなに男にアプローチされても、全て断っていたベルが……。

自らレイの腕の中に飛び込んで行った。
すがりつくように、彼の胸に顔を押し付けて泣いている。

最初は驚いた顔をし、されるがままにされていたレイも、ふと我に返った様子で、頬を緩ませながらベルの背中に腕を回した。

「レイ。
レイラカ……。
わたしのレイ……!
大好きな、ナイト……!」

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