ベル姫様と溺愛ナイト様
「……ん……。おねぇ、眠い……」

店を出るレイの背中を見送って、それからベルの手を引いて、部屋へ連れて行く。
過保護かな、とも思ったが、とろとろと歩くベルは危なっかしくて放っておけなかった。

「それにしても……」

まじまじとジェミロは妹を眺める。

無意識の笑顔で、ナイトをとことん落としたな……。

可愛い妹のベルには、町にファンが溢れかえるほどいる。
ベルに憧れる小さな子ども達。
明るいし、一緒にいると楽しい、とよってくる同世代。
一生懸命で好きだわ、と可愛がってくれるおじさんおばさん。
いつも優しい、とまるで孫かのように接するおじいさんおばあさん。
とにかく老若男女、ベルは大人気だ。

ベルと付き合いたい男なんてそれこそ掃いて捨てるほど。
さっきのレイは、そんな町の男たちと同じような顔でベルを見ていた。
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