ベル姫様と溺愛ナイト様
何年もベルを探していたらしいし、一緒に王国を統べるなんて言っていたから、前々から将来を意識していたのだとは思う。
しかしあの顔は主君を見つけた、というよりも、恋する相手を見つけた、という顔だった。

普段からこうなのだ。
ベルは無自覚無意識で周囲に可愛さを振りまいては、相手を夢中にさせる。

「罪な可愛さだな、全く」

あまりに眠かったのか、部屋についた途端、ベルはベッドにダイブし、すぐに静かに寝息を立て始めた。
そんな妹の頭を一撫でして、ジェミロは静かに部屋を出た。

廊下を歩きながら考える。
まさかベルが一国の王女だなんて、未だに信じられない気持ちはある。
が、とっさのことで驚いているだけで、きっと本当のことなのだろう。
理解するにはジェミロにもベルにも、まだ時間が足りない。



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