アンティークドール



『さて、今度の子はどんな暗い過去を作るのかしら…?』


黒猫が膝の上で鳴く


まるで一緒にあざ笑うかのように



ただ…ただ、甘い匂いが漂うばかりで…





「ねぇっねぇってば!」

「え?……あ、あぁ」



「本当!さっきから様子が変だよ!」


「ごめん…大丈夫だよ?」


「無理して笑ってる!」


「へ?」


「あたしは満に笑って欲しいから連れてきたのに満…笑ってない…」


「あ…」



「だから笑ってよ!満が笑うと私も自然に笑えるんだから」



真千がニコッと笑った


真千の言葉は魔法みたいだ


今までの恐怖を吹っ飛ばすぐらい、強く、優しい声


だから俺は彼女を好きになったんだ


俺は「うん」と精一杯の笑顔で真千に笑いかけた



< 8 / 208 >

この作品をシェア

pagetop