アンティークドール
「こらっ!満!」
星麗那の怒鳴り声で、俺は現実に引き戻された
「あ……なに?」
「すぐに悲しい顔をしないでよ、悲しいのは満だけじゃないんだから…」
「ゴメン」
星麗那の考えも一理ある
斑を殺された悲しみは、星麗那、ユージ、俺、全員に共有される物だ
だけど、悲しみ以前に…この事件の発端はすべて俺である事を知っているのは俺だけで……これは皆にはない悲しみ
「はいはい!文化祭は近いんだから、作業を手っ取り早くして…。私たちの休暇は短いんだから」
「わかってるよ」
わかってる
ワカッテル
だからこそ、辛いんだ
短い間でも、忘れられるのなら…とても嬉しい事だと思う
だが、【忘れる】なんて事はできない
一部の記憶の欠片は俺の心に止まって、動こうとしない