QUEEN of the JOKER
振り上げた右の拳は、流石剣龍の副総長と言うように片手で抑えられる。


だけどあたしは力を緩めなかった。


殴る時の勢いはそのままにしている。つまり、橘が抑えている手を緩めれば、橘はあたしに殴られるだろう。


だからこそ、橘も力を緩めなかった。


釣り合っているような押しあっている状態はしばらく続いた。


「…ふふ、手が痺れてきたよ」


橘は微笑むと動きに出る。


反射的にあたしは手を離して、両腕を胸前で組みガードの体制に入る。やはり、橘は蹴りを入れて来たのだ。


「…こっちも、腕がキンキンする」


あたしの両腕は橘の蹴りによって痺れていた。


…見た目はひょろひょろなくせに、この男…力強い。


「JOKERの副総長さんお得意の蹴り、俺にも見せてほしいな」


…さっき見てたくせに。


内心そう思い、橘と距離をとりながら次の手を考える。


…蹴りは確かに得意だ。


でも、こいつの挑発に乗ったら奴の思う壺。


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