QUEEN of the JOKER
───────・・・が。


「待ってよ瑞希~!」


両手で抱きしめるようにしてゴミ箱を持っていたあたしは1人、階段を降りていた。


すると後ろから和田の声がする。


振り返ると和田の腕にゴミ箱がある。


「俺も手伝うよ」


ニコッと笑う彼はあたしの隣に来る。


「…勝手にしなよ」


ありがとう、なんて照れくさい。


和田は更にパアっと笑顔になり「うん!」と頷く。








───────────・・・




「瑞希も大変だね~。森っちに頼られっぱなしも」


「まぁ、あたしは先生にただの生徒って見られてるから」


「でも瑞希強いのに、何で不良辞めたの?」


「ちゃんと勉強して高校卒業しようと思っただけだよ」


いつの間にか和田のペースに飲み込まれていたあたしは最早そんなの気にせずに和田との会話を楽しんでいた。


「ふーん…瑞希は根っからの真面目なんだね」


「そうでもないけど…。こういうのも悪かないかなぁって思って。そういうあんたは?」


「俺?…俺はこれって言った進路決まってないんだよね。来年の話なのに、そろそろ迷った方がいいのかなぁ」


「迷おうと思っても解決しないんじゃない?あんたは剣龍続けないの?」


「それは…」


突然口ごもる和田。


…あたし、まずい事聞いたかな…?


「剣龍には居続けたいって思うけど、本当にそれしか願ってないのかって考えるんだ」


上を見上げながら話す彼は困ったように笑う。


「…なんて、剣龍には内緒だよ?」


彼の笑顔の裏には、どちらも取れない…そんな選択肢があったことをあたしは知った。
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