白い雪が降り積もるように
「依良、お前に頭首を放棄し、次期頭首を決める決定権はない。それは私が持っているものだ」
蓬條紗良は跡継ぎの長男を見ながら渡り廊下を渡り終えると、まっすぐこちらへ向かって歩いてきた。
そして、私の影に隠れる紗也様の頭を撫で、割れた窓ガラスを一瞥すると蓬條良威の方を見た。
「……この騒ぎはお前の仕業か、良威」
「……………………」
何も言わない次男に、彼女は容赦ない平手打ちを食らわせる。
「紗良!」
突然の妻の行動に、達也さんはあたふたしている。
「いってぇな!何しやが──」
「喚くな。そんなに喚いて私の気を引こうとしても無駄だ。私はお前のような愚息を蓬條の頭首にするつもりはない」
「っ!?」
「分かったら部屋に行け。私が良いというまで出てくるな」
冷たい眼差しのままそう告げると達也さんを伴って屋敷の廊下を歩いて行った。
そして、蓬條良威も平手打ちで切れた口の端を袖で拭うと逆方向の廊下を歩いて行った。