白い雪が降り積もるように
3.協力者
「痛……っ」
切れた口の端に消毒液のついた脱脂綿を押し付ければ、蓬條依良は顔をしかめる。
蓬條依良の自室に戻ると、玖下さんは手早く彼の口の端を治療し始めた。
殴られた頬も腫れかけており、切れた所を治療されながら彼は氷を頬に押し当てていた。
「依良様、申し訳ありませんでした。仕える主に助けられるなど言語道断ですよね……」
本当は勝手に庇ったのだから自業自得だと言ってやりたいが、助けてもらった感謝が無いわけではない。
僅かだが、庇ってもらったことを有り難いと思っている。
……下手したら、殴られた拍子にウィッグが飛んだかもしれないしね。
頭を下げると、蓬條依良は口の端の悼みに顔をしかめながら、手をヒラヒラと振っていた。