白い雪が降り積もるように
5.賭け
その夜。
私は蓬條依良に呼ばれた。
何故呼ばれたのかはもう分かっている。
「お呼びですか、依良様」
部屋に行けば電気は付いてなく、蓬條依良が窓際のデスクの椅子に座っていた。
カーテンの開け放たれた大きな窓から射し込む月の光に照らされ、その整った顔立ちが妖しくも綺麗だった。
「……勘の鋭い君なら呼ばれた理由は分かってるよね?」
デスクに頬杖をついて静かに私を見つめる蓬條依良。
やはり、この男は私の正体に気付いている。
もう隠しても無駄だと理解し、私はウィッグを外して放り投げた。
と、同時に駆け出した。
蓬條依良の方に駆け出し、彼を押し倒そうと肩を押した。
椅子ごと倒れた彼の首に手をかけると、ふと己の首筋にヒヤリとした感覚がする。
ピリリとした気配が背中の方から感じる。
この時、これが殺気だと初めて知った。