白い雪が降り積もるように
でも、彼は──。
「良いよ、殺しなよ」
あまりにも穏やかな顔でそう言った。
驚いた私は反射的に首にかけていた手を緩めてしまう。
何を言ってるの、この男は……。
ふと、彼は私の頬に手を伸ばして来た。
頬に触れたその手は暖かく、優しかった。
「君がどれだけ蓬條を、俺を憎んでいるのかはこの涙を見れば分かるよ」
親指を動かして頬を拭った彼の指は濡れていて、私は自分が泣いていたことに気づく。
その手を振り払うと奥歯を噛み締めた。
何故、私は泣いてる?
彼を憎みすぎて涙を流しているの?
それとも、お父さん達の敵を取れることから来る嬉しさから?
自分でも分からない……。