白い雪が降り積もるように
「……何を迷ってるの?」
いつの間にか蓬條依良の首から手を離し、私は頭を抱えていた。
彼を殺す迷いはない。
なのに、何故……。
何故、私の本能は≪この男を殺すな≫と喚いている──?
「俺が憎いんでしょ?」
うるさい……。
「なら、迷うことない」
うるさい……。
「殺せば良い」
「うるさい、黙れ!私だって、アンタを殺してやりたいよ!なのに、いざ殺すとなったら出来ないんだよ……」
本能がうるさいくらいざわついている。
殺してはいけない、と何度も身体の奥で誰かが語りかけてきている。
半ば逆ギレ状態で蓬條依良に怒鳴ると私は彼の上から退け、両手で顔を覆って嗚咽堪えながら身体をくの字に曲げた。