白い雪が降り積もるように
「行きたくない理由は分かってる。だが、跡取りがそんなことで良いはずがない」
「俺は跡取りなんてどうでも良い、そう言ってるだろ」
「それは認めないと何度も言っているだろう。まったく、いつまであの事を引きずっているんだ」
あの事?
突然会話に出てきた不可解な言葉に眉をひそめる。
呆れたように言ってのけた母親に、蓬條依良は何も言わない。
「あの事は仕方ないことだ。気にした所で何にな──」
「……アンタだって、いつまで引きずってるんだよ?」
「何?」
息子の言葉に、蓬條紗良の声音が低くなる。
蓬條紗良も何かを引きずっている?
興味深い話に、胸が高鳴る。