白い雪が降り積もるように
彼女の最愛の宝物、二人の息子を殺す……。
そんな異常なことをしてまで彼は姉を引き摺り落としたかった。
跡取りは男であろうと女であろうと長子。
そんな蓬條の家訓のせいで第二子である彼は男であるにも関わらず、長になって実権を握れない。
それは彼にとって屈辱であり、姉に対する憎しみでもあった。
蓬條圭二はあまり景気の良くない小さな会社を経営する友人と共に姉の不在を狙って、まだ八歳の甥達を誘拐した。
身代金を要求し、金が手に入ったら二人を解放するというのが友人に話した計画。
しかし、彼は金が手に入ったとしても入らなかったとしても甥達を殺すつもりでいた。
愛に深く、息子達を大切にしている姉からそんな二人を奪ったらどうなるか彼は分かっていた。
蓬條の長を勤められなくなるほど悲しみにくれるだろう、と。