白い雪が降り積もるように
「優しい母親だったんだな……」
良威の言葉に頷くと、自分のにもマシュマロを落とした。
じんわりとココアの熱でマシュマロは溶けていく。
それは雪が日に当たって溶けていく様子にも似ていた。
私の中にある憎しみの感情もこんな風に溶けて、なくなってしまえば良いのに……。
今までならそんなこと思わなかったはずなのに、彼からあの言葉をかけられてから思うようになってしまった。
何故だろうか……。
「なぁ、篠原」
そんなことを考えていると、良威が私を呼んでくる。
普段篠田と呼ばれているから、本名で呼ばれることに不思議と嬉しさがあった。
玖下さんや良威は場に応じて本名で呼んでくれるけど、蓬條依良は私の本名を呼ばない。
呼んでも、君とか篠田君とかだ。