白い雪が降り積もるように
「依──」
「≪冬雪≫」
彼が私の本当の名前を呼んだ。
これまでも呼ばれていた私の名前なのに、他の人に呼ばれたときとは違う感覚がした。
彼に初めて呼ばれたこの感覚。
甘く痺れるような身体の疼きに、頬が熱くなる。
それなのに、彼は私を惑わす行いをした。
「冬雪」
もう一度私の名前を呼んで、彼は私をその腕の中へと引き寄せた。
お互い身体が濡れているから冷たいと感じたのは一瞬で、すぐに温もりを感じられた。
何故、こんなことをするか分からなかった。
でも、不思議と嫌じゃない。
もし、私の気持ちが揺らぎ始めた日があるとしたらこの日だった。
この日を境に、私や彼の周りを取り巻く関係が悲しいほどに狂っていく。