白い雪が降り積もるように


「……母さんみたくいつまで引きずってても仕方ないからね」




そう伏し目がちに告げると蓬條依良は私を一瞥し、歩き出した。




恐らく、ついてこいという意味だと思い、蓬條依良と玖下さんの後を追いかけた。





その場に残っている蓬條紗良の方を振り返ると彼女は俯いていて、表情は見えなかった。






蓬條紗良が恐らく引きずっているのは私のお父さんに最愛の息子を殺されかけ、実の弟に裏切られたこと。





親子揃って身近な人の裏切りを経験している。





裏切りを否定する訳じゃない。





現に私も蓬條依良を裏切ろうとしていし、その双子の弟に協力させて蓬條を裏切らせようとしている。





でも、裏切りをすることで悲しむ人や苦しむ人がいることは確かだ。





それでも、何かしらの理由があって裏切りという人道から外れた行為をしてしまう……。




人というものは悲しい生き物なのだと感じさせられる。






< 238 / 422 >

この作品をシェア

pagetop