白い雪が降り積もるように
そこはホールというよりも幻想的な教会のような場所だった。
壁や天井は真っ白、床は強化ガラスが入れられた透明なもので水が張られ、LEDライトで七色の光を放っている。
その幻想的な空間に、ポツンとある漆黒のグランドピアノ。
グランドピアノの前には一人の男の子が座っていて、鍵盤に指を滑らせていた。
軽く身体を揺らしながら美しい音色を奏でている。
曲名は分からないけど、聞き惚れてしまうほどの美しい旋律だ。
この音色を奏でているが蓬條依良だろうか?
ふと、ピアノの音が止んだ。
「玖下、その子は?」
ピアノを見ていた彼の目が私を捕らえる。
そして、あろうことかこっちに向かって歩いてきた。