白い雪が降り積もるように


何か至れり尽くせりだけど、髪を洗っている彼の手は本当に美容院で洗ってもらっているかのように気持ちいい。




それに、この手は何処かで感じたことがある気がする。





ふと、脳裏に幼い頃の記憶が甦ってきた。




昔過ぎて忘れてしまっていた記憶。




多分、それは私が幼稚園だった頃の記憶だと思う。





迷子になった私に手を差し伸べてくれた名前の知らない小学生くらいの男の子。





『大丈夫だよ、僕が道標になって君の大切な人を見つけてあげる』





幼い容姿の割に大人びた言葉遣い。




その頃は意味が分からなかった。




ただ、この男の子は私のためにお父さん達を探してくれることは分かった。




そんな優しくて、頼りになったその男の子に抱いた気持ち。





それは恋だったのかもしれないけど、今となっては忘れ去られていた過去の思い出だ。





その男の子の手が玖下さんの手に似ているような気がした。







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