白い雪が降り積もるように
2.卑怯な優しさ
その夜。
私は部屋を抜け出して、蓬條依良の部屋へ向かった。
自分の意思で行くのではない。
彼に渡すものがあると呼び出されたのだ。
部屋の前についてドアをノックすれば、中から短い返事が聞こえた。
ドアを開ければ、蓬條依良は本棚の前で本を選んでいた。
「何かご用ですか?」
好きという感情があるのに、彼の前ではそれを悟られたくないから前と接し方は変えない。
呼び出されたことが不服であるかのように不機嫌そうに言えば、蓬條依良は苦笑いを浮かべる。
「そう急かさないでよ」
本棚の前から窓辺の机に移動した彼は引き出しから一通の封筒を取り出した。
そして、私に差し出される。