白い雪が降り積もるように
4.複雑に絡み始めた関係
翌日。
「おはようございます、玖下さん」
既に仕事を始めていた玖下さんに声をかける。
「おはようございます、篠田さ──どうなさったのですか、そのマスク?」
振り向いた彼は私の顔を見て、ぎょっとする。
何故なら、私は昨日までしていなかったマスクをつけていたからだ。
「風邪ですか?」
「い、いや、違います。ただ、ちょっとヘルペスが出来てしまいまして……」
「それは大変ですね」
ヘルペスが出来たなんて嘘だ。
昨日、良威にキスされてから擦りすぎて皮が剥けて赤くなってしまったから隠すためのマスクだ。
そんなことを正直に玖下さんに言えるわけもなく、ヘルペスと誤魔化した。
現に彼は信じてくれている。