白い雪が降り積もるように
「酷くなる前に病院行きなよ」
でも、私が深読みしたのか、彼は特に気に留めることもなく、再び机に向かった。
お茶を出すがてら、彼のしていることを覗き込むと目が点になる。
彼が机でしていたのは勉強だったらしく、机に広げられた教科書とノートには意味不明な公式が書かれていた。
「……え、意味不明」
「え?」
つい、思っていたことを口に出ていてしまったようで、彼が私を見上げてきた。
「何でもない」というかのように首を振ると、彼は再びノートに公式をすらすらと書いていく。
平凡な頭脳の私には理解し難い問題を、蓬條依良は本当に考えているのかと疑ってしまうほどの速さで左手を動かしている。
左利きは頭が良いと言うが、本当らしい。
私はお茶を出し終えると、玖下さんと共に彼の部屋を出た。