白い雪が降り積もるように
すると、廊下の反対側から今一番会いたくない人と遭遇した。
「玖下、そいつを貸せ」
一番会いたくない人──、良威は両手をスウェットのポケットに突っ込みながら玖下さんを見た。
玖下さん、貸さなくて良いです!
そんなことを心の中で願っていたけど、使用人である玖下さんが逆らえるはずもなく。
「篠田さん、先に行っております」
玖下さんは私をその場に残して、仕事に行ってしまった。
き、気まずい……。
昨日の今日で、良威と二人きりはきつい。
それに、良威は何も言わずに私を見ている。
せめて、何か言って欲しい。
そんなことを思っていたら、良威が口を開いた。