白い雪が降り積もるように
「……お前が好きな奴は知ってる。でも、俺はアイツにお前を渡すつもりはねぇよ」
良威はそう言って私の手を離すと、応接室を出て行った。
私を渡さないと言った良威の目は本気だった。
本気で私を好きらしい。
私が好きなのは蓬條依良。
でも、彼が私をどう思ってるかは分からない。
愛される方が幸せになれるって誰かが言っていた。
蓬條依良が私を好きになってくれる保証はない。
それなら、私を本気で好きと言ってくれる良威を好きになれば幸せになれるのかもしれない。
それなのに、私は良威を好きになるなんてあり得ないと思ってしまっている。
たとえ、彼が私を好きになってくれなくても私は彼しか好きにならない。
そう確信していた。
「……さて、どうするべきかな」
私は身の回りが複雑になってきたことに頭を捻った。
でも、この時はもっと複雑なるとは思っても見なかった。