白い雪が降り積もるように
でも、それは触れられている玖下さんの手によってすぐに引き寄せられる。
今度は玖下さんが自ら私の胸に顔を埋めるようにして背中に手を回してきた。
「……こんなに人の温もりが優しいなんて知らなかった」
玖下さんの行動に私の両手は行き場を失い、宙を漂っていた。
「……母親からも仕事上で付き合った彼女からもこんな優しさは感じられなかった」
「玖下さん?」
名前を呼べば、玖下さんは私を見上げるようにして顔を上げた。
玖下さんの顔は昨日の良威と同じ顔だった。
好きな人を見る、そんな顔だった。
「恋って苦しいね……」
そんな呟きが聞こえたかと思うと玖下さんの顔が近づいてきて、マスクの上から彼の唇が私のそれに重なった。