白い雪が降り積もるように
「俺はお前が羨ましいよ、玖下……」
蓬條ではない玖下。
それに噂によれば、玖下はあの子の初恋の相手らしい。
俺よりもあの子と結ばれる可能性がある。
そんな玖下が羨ましかった。
頭から浴びる冷水で込み上げてくる感情を宥める。
これが嫉妬だというなら醜いものだ。
人を好きになるとこんなに苦しくて、醜い想いを抱くようになるのか……。
「恋って面倒だな……」
自嘲気味に笑いながら醜い感情が流れる訳でもないのに、俺はしばらく冷水に打たれていた。
この後風邪を引き、彼女と距離が近くなるとは知らずに──。
≪依良side end≫