白い雪が降り積もるように
第七章:愛惜
1.叶わない恋
「38.5℃……」
体温計を見て、険しい顔をしながらベッドの主を見る玖下さん。
ベッドの主、蓬條依良は顔を赤くして咳き込んでいた。
「依良様、医者をお呼びしますね」
「良いよ……、ただの風邪だから寝てれば治る……」
「いけません。既に3日は熱が下がっていないのですからね。ただでさえ、貴方は呼吸器が弱いのに悪化したら肺炎になりかねません」
玖下さんはそう言って、部屋を出て行った。
玖下さんの過去を聞いてから三日後。
蓬條依良は風邪を拗らせ、寝込んでいた。
本人は布団をかけて寝ていなかったせいだと言い張っていたけど、彼は寝相が悪くない。
だから、布団をかけずに寝るなんてあり得ない。