白い雪が降り積もるように
「依良……」
目から溢れる涙が床で弾けた。
彼の名前を呟いただけで、顔を思い出しただけで涙が溢れてくる。
私には幸せに出来ない。
優しさと悲しさを持ち合わせた雪のように消えてしまいそうなくらい儚い彼を。
こんな復讐をしようとする汚れた私が出来るはずがない。
≪彼を幸せにする人は別にいるから身を引け≫
そう自分に言い聞かせるけど、納得出来ない自分がいる。
私以外に彼を幸せにする人なんていない。
そう思ってしまう私がいるから。
「……貴方を好きになんてならなければ良かった」
その場に崩れるようにしゃがみこむと、溢れてくる涙をただ流していた。
心の中で彼が拭いに来てくれると思っていたから。
でも、彼が来ることはなかった。