白い雪が降り積もるように
「それにしても、依良君は料理上手だねー。お金持ちのお坊ちゃんだから何も出来ないのかと……」
キッチンから聞こえてくる何気に失礼な拓実さんの言葉に、私はキッチンの方へ行った。
「……本当だ、上手」
キッチンのカウンターから蓬條依良の手元を覗き込むと、そこには何故かブッシュドノエルがあった。
夕飯を作っていたはずなのに、何故にケーキ?
「妹がお菓子好きなので、たまに付き人に教えてもらってたんです」
困ったように笑う蓬條依良は手元の透明なパネルにチョコで何かメッセージを書いていたらしく、それを壊さないように器用に外した。
そして、それをブッシュドノエルの上に静かに乗せる。
「≪HAPPYBIRTHDAY FUYUKI ≫……?あ……っ」
お姉ちゃんが亡くなったことで忘れていた。