白い雪が降り積もるように


「やっと……見つけた……」




後ろからかけられた息の切れた声。




振り返るとシャツにカーディガンを羽織っただけの蓬條依良が立っていた。




彼は私の姿を見つけて安心したように近付いてくると、目線を合わせるようにしゃがんだ。





「エレベーター使えなくて、階段で降りてきたから……。でも、そんなに遠くに行ってなくて良かった……」




え、13階から階段で降りてきたの?





息を切らしているということはダッシュで降りてきたのだろう。





痩せていて、インドア派の彼からは想像できないことだけど多分彼は運動神経も良い。




だから、そんなにおかしくはない。





彼は深く息を吐くと、私の頬に触れて涙を拭ってくれた。




「何故、泣いてるの?」




人が行き交っていて騒がしい場所なのに、彼の声だけは鮮明に聞こえる。






< 392 / 422 >

この作品をシェア

pagetop