白い雪が降り積もるように
すると、後ろからグイッと腕を掴まれた。
「辞めるって言っておきながら何故泣いてるんだよ!」
そこにいたのはさっきまで会話していた蓬條依良だった。
泣いてる、私が?
頬に触ればそこは確かに濡れていた。
「どうせ、母さんが一方的に辞めさせたんでしょ?」
彼の問いに肯定も否定もしない私に、彼は苛立ったのか私の手を引いて歩き出した。
「ちょっ……何を……っ!」
「俺は君がいない蓬條にいるなんた御免だ。だから、蓬條を捨てる」
私の手を引いて歩く彼は前を向いたまま、そう言った。
蓬條を捨てるって……。
私は蓬條紗良との話を告げようとしたけど、彼女から彼に告げることは禁止されている。
でも、このままだと彼は──。
すると、蓬條の門を出た辺りで彼はタクシーを停めた。
そして、ようやく私の方を振り向いた。