白い雪が降り積もるように
「一面真っ白……」
誰もいない一面真っ白な場所に着いた。
見渡す限り雪と雪帽子を被った木々が広がっている。
彼が誰もいない所で雪が見たいと言った理由が分かる気がする。
真っ白な雪を見ていると、何故だか心まで白くなってしまうように思えた。
「もう何もかも白く染まってしまえば良い。そうすれば、何も考えなくて良い」
自然とそんなことが口から漏れた。
白く染まってしまえば、もう考えなくて良い。
私の生きようとしてる道もしようとしていたことも。
彼を想う気持ちでさえも──。
すると、今まで黙っていた蓬條依良が後ろから抱き締めてきた。
優しい腕も温もりも……。
「冬雪」
言い慣れず、少し緊張気味に私の名前を呼ぶ声。
彼の全てが愛しく思う。
この気持ちまで白く染まってしまえば、私はもう苦しまなくても良い。