白い雪が降り積もるように
「何故、泣いてるの?」
すると、寝ていたはずの彼が目を覚ましていて、私の方を見ていた。
「……起きてたの?」
「うん。君がしようとしてることも何となくは分かってる」
彼は私の方に手を伸ばしてきた。
私も手を伸ばすと、手は固く握られる。
「分かってたんだ……。何でもお見通しなんだね」
「……それで、君は何処に行くつもり?」
「教えない」
彼に居場所を教えては意味がない。
私は彼に相応しくなるために離れるんだから。
私の返答に、彼はしかめっ面をするけど諦めたようにため息を吐いた。
「君が頑固なのは知ってるから教えてくれないとは思ってたよ」
「でも、その頑固な私の意志を曲げたのは貴方でしょ?お陰で復讐する目的がなくなった」
「まあ、その復讐も勘違いだったしね」
でも、その勘違いがなければ、私は彼と出逢わなかった。
こんなに好きな人に出逢えなかった。
誰よりも愛しい蓬條依良という人に出逢えなかった──。