白い雪が降り積もるように
「ああ、大丈夫……」
依良様の返答を聞くと篠田さんは起き上がり 、もう一度襲いかかってこようとする男に今度は背負い投げを食らわせ、腕を捻り上げた。
そして、男の耳元で何か囁く。
彼の言葉に男は脱力すると大人しくしていた。
彼は……篠田さんは何者なのだろうか?
あれらは一朝一夕で出来るものではないし、彼の所作を見る限り相当の実力者に見える。
「……玖下、もう≪それ≫から手を離せ」
ふと横から依良様に声をかけられた。
反射的に掴んだ≪それ≫──、銀食器のナイフは己の手の中の収まったままだった。
慌てて手を離すと、依良様に頭を下げた。