白い雪が降り積もるように
この子は本当に優しい子だ。
誰かを想って涙を流せるなんて本当に優しい子じゃないと出来ないことだと思う。
「お兄ちゃんを裏切る人は嫌い。お兄ちゃん。悲しい顔しちゃうから……。私は笑ってるお兄ちゃんが好きだから笑っててほしい」
もしかしたら、紗也様が蓬條依良の前でお転婆娘のような行動は兄である彼を少しでも笑ってもらいたくてやっているのもかもしれない。
「お優しいのですね、紗也様は」
「ううん、優しいのはお兄ちゃんだよ」
「そうですね。分かりました、紗也様の願いは私が聞き届けました」
紗也様はぎゅっと私に抱き着いてきた。
本当に優しいよ、紗也様は。
でも、私はそんな貴女に嘘をついた。
私は蓬條依良を守らない。
それどころか、命を奪うつもりだ。