白い雪が降り積もるように
「紗也ー、お兄ちゃんが帰ってきたぞー」
笑顔で話しかける彼に対し、紗也様は怯えたように私の影に隠れてしまった。
あれ?
蓬條依良には「お兄ちゃん、お兄ちゃん 」と何処にでもついていく位なついているのに、蓬條良威にはなついているようには見えない。
寧ろ、怖がっているようだ。
そんな紗也様の反応が面白くなかったのか、蓬條良威は近くにあった花瓶を窓ガラスの方へ投げた。
窓ガラスは砕け飛び散り、外に飛んでいった花瓶も割れる音がした。
「依良のことは大好きなのに、俺のことは嫌いなのかよ、紗也?」
「止めなさい、良威」
紗也様を睨み付ける蓬條良威を達也さんが宥めるように止めた。
が、宥めるどころか逆撫でしてしまったようで……。