白い雪が降り積もるように
蓬條依良は玖下さんが何も言ってこなくなったことを確認すると言葉を続けた。
「俺はお前違って頭首の座なんて興味がないし、欲しくもない。あの母親が作り上げた醜悪な地位なんか俺はいらない。だから、お前に──」
「放棄は認めないぞ、依良」
蓬條依良の言葉を凛とした女の声が遮る。
声がした方にはあの女がいた。
「……母さん」
「……お袋」
双子が忌々しそうに見つめる先には彼らの母親がいる。
倉庫の脇の渡り廊下から冷たい眼差しで息子たちを見つめるのは蓬條の女頭首、蓬條紗良だ。