こくおうさまのすきなひと
会場は城内の一階にある大広間。

近付くにつれて、話し声や音楽が聞こえる。

エントランスには警護の騎士や世話をする侍従達に加え、何人かの貴族達が輪を作り話に花を咲かせていた。


「……おお、国王様夫妻がいらっしゃったぞ」

「素晴らしい。あれがアーネストの王女だったお方か……」


私達に気付いた貴族達が、そうくちぐちに話をしているのが耳に入った。


貴族達に、微笑みかけ頭だけ軽く下げる。

すると、貴族達は慌てて姿勢を正し、一礼をした。



大広間の中もまた、沢山の貴族で賑わっている。

私達が広間の入り口に姿を現すと、一斉にこちらの方を向き、そして静かになった。


貴族達が左右に分かれ、玉座に向かって道が出来ている。

その開かれた道を国王様とふたり、ゆっくりと歩いた。


そして玉座の前に行くと、貴族達に向けて話を始める。


「――皆忙しい中、参加して頂きとても嬉しく思う。紹介しよう、東の国アーネストから我が国へと嫁いだ、ミネア・ウィス・アーハイム正妃である」


国王様が私を紹介すると、貴族達は一斉に首を垂れた。

その後、拍手が沸き起こる。


私はそれに応えるように、深々と一礼を返した。

< 101 / 220 >

この作品をシェア

pagetop