こくおうさまのすきなひと
今までは手までしか握った事がなかったから、分からなかった。
こんなにも国王様の胸板は広くて厚く、そして温かいものだと。
その中は緊張はするけれど、とても居心地のいい所だった。
何故かこのまま離れたくないという衝動に駆られる。
きっと私は、その長くしなやかな指先で唇をなぞられ、その瞳で情熱的に見つめられてしまったら、魔力にかかってしまったように動けなくなって、意識を手放してしまうに違いないだろう。
――その時、私は気が付いた。
……もしかして、これが恋というものかしら。
相手に対しての飽くなき欲求と、これほどまでの高揚感。
心のざわめきは、一向に収まる事を知らない。
こんな感情は初めて。
けれど、決して悪いものじゃない。
国王様の事がもっと知りたい。
国王様にもっと触れていたい。
私が他人に対して、こんなに興味を持ったのは国王様が初めてのこと。
――だとしたら。
……ああ、私は。
きっと、国王様に恋をしてしまったのかもしれないわ……。