こくおうさまのすきなひと
「その、初めてだったのだ。……初めて一目惚れをして、好きになった。夫婦なんだから、と言うかもしれないが、夫婦だからこそ、なかなか先に進めないでいるのだよ。嫌われてしまったら、一生そのままで共に過ごさねばならないから。そう思うと怖気づいてしまってな……。我ながら腑抜けな男だと思っている」
「アハハ、そりゃあ兄さんらしくないな。でも、兄さんは本当の愛を見つける事が出来たんだね。その点は素晴らしい事だよ。でも、このままでは良くないと思うけどな。何か作戦は練っているの?」
「いや……、とりあえずゆっくりと徐々に距離を詰めていければいいと思っているよ。今は手を繋いで寝るだけ、だがそれで今はじゅうぶんだと」
「そう自分に言い聞かせているだけだよね?そろそろ自制が効かなくなっていくんじゃない?」
「そ、それを言うな!」
確かにそうだ。
初めて手を繋ぎ寝た日、ミネアが気持ちよさそうに寝ているのを近くで見つめ、私は小さな声で名を呟いた。
名を呼ぶと、ミネアの唇が微かに弧を描く。
その表情がとても愛おしく、繰り返し名を呼んだ。
すると、ミネアは自分の腕を私の腕に絡めるようにして体勢を変える。
爆発しそうなくらいの激しい鼓動が、私を襲う。
それ以上名を呼んでしまったら自分を抑えきれなくなると思い、なるべくミネアの顔を見ないようにして眠りについた。
しかし翌日もミネアが寝た後、どうしても我慢出来ずにミネアの名を呟き、さらにミネアの頭を優しく撫でた。
そしてその次の日も、また同じように名を呟いた後、今度はミネアの顔を指でなぞった。
日を追うごとに、徐々にもっと触れたいという欲求が高まって、それを抑えているのが現実である。