こくおうさまのすきなひと
「それにしてもさ、災難だったよね。どんな男か分からない奴と、突然結婚するなんてさ。ここに来るまでも、来てからも相当悩んだでしょう?」
「それは、まあ……。でも、この身分で生まれてしまったのだから、仕方ないと諦めました。私ひとりの思いだけでは国は守れませんもの」
「ふふっ。真面目だね、姉さんは。でもさ、安心して。兄さんは、昔はその……ちょっとアレだったけど、今は会心して誠実な人だからさ」
「ちょっとアレ、とは……?」
「あ、ごめん、それはこっちの話」
そう言ってロア様はひとりでクスクスと笑っていた。
……アレだったとは一体何の事だろう。
今は会心して?
国王様は、昔どんなお人だったのかしら……。