こくおうさまのすきなひと
まさか、と言いたかったけれど、顔を上げたロア様の表情はとても真剣だった。

冗談で話しているのではないと、その表情ですぐ理解出来た。


「わ、分かりました。国王様を信じ、ついて行くのですね?」

「うん、お願いね、姉さん。……ああ、そうだ。この事は兄さんには内緒にしておいてくれるかな?余計な事を!って怒りそうだからさ」

「え、ええ。私の心の内にだけで留めておきますね」


ロア様は安心したのか、真剣な表情からふっと笑みが零れた。
そしてカップに残っていた紅茶をぐっと飲み干すと、椅子から立ち上がる。


「それじゃあ、僕はこれで失礼するね。姉さんの結婚式でのドレス姿を楽しみにしているよ。では、また」


ロア様が部屋から出ていくのを、笑顔で見送る。

しかし、私の頭の中は依然、困惑したままだった。



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