こくおうさまのすきなひと
ロア様の気配が完全に消えたのを感じてから、私はティアに零す。


「……どういう事なのかしら。ねえ、ティアは分かる?」


ティアもまた、訝しげな表情を浮かべ、頭を左右に振る。


「さあ……。私にも何の事だか。でも、何があってもって、まるでこれから何かが起こるような物言いでしたから、私は逆に不安を覚えてしまいましたよ」

「……そうね、言われてみれば」


少なくとも一緒にいれば、意見の相違で衝突する事はあるだろう。


人間だもの、それぞれの考えがあるわけだし、それは私も心している。

その事で国王様自身を否定するまで、嫌ったりはしない。


……だけど、ロア様の言葉はそういう些細な事じゃない。


もっと、何か大きな出来事。


起こるかもしれないではなく、これから起こりうる事に対しての、私への不安だ。

ロア様があそこまで言うという事は、それだけ国王様に対しての気持ちが揺すぶられるほどに、深刻な問題があるのだろう。

それが、一体どのようなものか、今の私にはわからない。


……だけど。

「信じるしかないのよね。……凄く怖いわ」


身体がぶるりと震える。

自分を抱きしめるようにして、ドレスの生地を握った。

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