こくおうさまのすきなひと
「お疲れさまです、ミネア王女……、ど、どうなされたのですか?」


部屋にはティアが待っていて、そう声を掛けてくれたけれど、それに対して返す言葉も出ないまま、ベッドに顔を埋めた。


堪えていた涙が堰を切ったように溢れ出て、シーツに染み込んでいく。

まだ外にアルス様たちがいるかもしれないからと、声を出さずにただ肩を震わせて泣いた。


「ミネア様……」

ティアは背中をさすりながら、ただ傍にいてくれた。


……馬鹿ね、私は。

アルス様と少し距離が縮まったと思っていたのは、私だけだったんだわ。

私にはまだ踏み込めない領域があるのに、勝手に縮まったと勘違いをして……。


浅はかな行動をしてしまった自分を悔やむ。

聞かなければ、気付かされなかったはずだから。


「……ごめんなさい、ティア」

「何か落ち着く飲み物をお持ち致しましょう。お疲れなのですわ、……おふたりとも」


そう言うと、ティアは足早に部屋を出ていく。



国王様が荒げた声は、部屋にいたティアにも聞こえていただろう。

何かあったと気付いているはずなのに、敢えて何も聞いては来なかった。



ティアにまで気を遣わせて、なんて私は駄目な王妃だろうか。

どんな時でも、冷静でいなければいけないのに。

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