こくおうさまのすきなひと
そう言われ、カップをテーブルに置くと、ティアの顔を見た。

ティアの表情は優れない。

何か深刻なものを抱えているといった、そんな表情をしている。



「今、このお話をしていいものか分かりません。ですが、お話した方がいいかと思いまして。……先程、私がお茶の準備をしに食堂へと向かっている時、城のエントランスからとても興奮した女性の声が聞こえておりまして、一体何事かと、不躾ながら死角から隠れて覗いたのです。そうしたら……」

「……そうしたら?」


ティアはその後、少し口ごもった。

その目線はゆらゆらと不規則に左右に揺らめいている。


「あの、やっぱり……」

「言って。何を見たの?」


私には言いにくい、でも言わなければならない"何か"をティアは見たのだと、その雰囲気から感じ取った。


国王様のあの激高と、ティアの反応。

間違いなくエントランスにいるのは、国王様と"女性"。


嫌な予感しかないのに、畳みかけて聞いてしまう。


「言って、ティア」




「その……、見てしまったのです。国王様が女性を抱きしめている、姿を」

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