こくおうさまのすきなひと
ティアの言葉を聞いて、さあっと血の気が引く感覚がした。
手先は一瞬にして冷たくなり、カタカタと小刻みに震える。
けれど、何とか冷静を装って、ティアに言葉を返した。
「そ、そう……。そうなの」
「申し訳ありません。本当は私が言うべき事ではないのはわかっております。……でも、どうしても許せなくて。国の為に覚悟を決め、この国へとミネア王女はやってきたのに、夫婦としての義務も果たさず、他の女性と人目も憚りもせずにあんな事を……!」
「……ティアは気付いていたのね」
「当たり前です!それらしき痕跡が何もないのですから!いくら表向きの結婚とはいえ、このような扱い!私はどうしても許せません!!」
ティアは目を赤くして、そう声を荒げる。
今まで一回も夫婦としての契りがない事を、私は誰に言う事なく隠していた。
いずれ知られてしまう事だとは分かっていたけれど、どうしてもそれをティアに言う事が出来なかった。
だって、今みたいにティアは悲しんでしまうから。
こんなに悩んで悲しんで、覚悟してこの国へと来たのに、ここに来ても私は悲しむ事になるのかって。
誰よりも私を心配してくれるティアだから。
全てを投げ捨て、私を想い共に来てくれた人だから。
手先は一瞬にして冷たくなり、カタカタと小刻みに震える。
けれど、何とか冷静を装って、ティアに言葉を返した。
「そ、そう……。そうなの」
「申し訳ありません。本当は私が言うべき事ではないのはわかっております。……でも、どうしても許せなくて。国の為に覚悟を決め、この国へとミネア王女はやってきたのに、夫婦としての義務も果たさず、他の女性と人目も憚りもせずにあんな事を……!」
「……ティアは気付いていたのね」
「当たり前です!それらしき痕跡が何もないのですから!いくら表向きの結婚とはいえ、このような扱い!私はどうしても許せません!!」
ティアは目を赤くして、そう声を荒げる。
今まで一回も夫婦としての契りがない事を、私は誰に言う事なく隠していた。
いずれ知られてしまう事だとは分かっていたけれど、どうしてもそれをティアに言う事が出来なかった。
だって、今みたいにティアは悲しんでしまうから。
こんなに悩んで悲しんで、覚悟してこの国へと来たのに、ここに来ても私は悲しむ事になるのかって。
誰よりも私を心配してくれるティアだから。
全てを投げ捨て、私を想い共に来てくれた人だから。