こくおうさまのすきなひと
咄嗟に私はセシリアを抱きしめる。


……というか、セシリアは今にも私に襲いかからんとする勢いであったため、身動きが取れない状態にした、というのが正解か。


例え女であろうが、私に危害を加えた者は、容赦なく囚われ罰を受けなければいけなくなる。

貴族の場合、最悪は身分剥奪の可能性もあるため、セシリアだけでなく一族全体にその罪が降りかかってくるのだ。


だから仕方なく、このような方法を取った。

私のせいでセシリアを罪人にするわけにはいかないから。



セシリアは始め抵抗をしていたが、次第にその力は弱まっていった。

反対に身体を震わせ、泣いているようだった。


私の事で傷付き泣いてしまうセシリアに対し、申し訳ない気持ちで一杯になる。

だからといって、そんな姿を見ても昔のような感情が溢れてくる事はなかった。


こればかりはどうしようもない。

私はもうミネアに心を奪われ、ミネアだけにしかその感情が出てこないのだから。


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