こくおうさまのすきなひと
――夜。


ティアが部屋を出ていき、ミネアとふたりきりになった。

途端に、私達の間を流れる空気が変わる。


それも私がミネアに声を荒げた、あの日の夜から始まっていた。


どちらとも会話をし難い雰囲気。

話したいけれど、どう切り出したらいいか分からない状況が続いている。


あの時の事を謝りたいのだが、どうして私が声を荒げてしまったのかを問われると、その理由を話すのが怖くて謝る事が出来ない。

このままでは状況は悪くなるのは理解しているが、私が理由を話した事で、ミネアとの仲が一瞬で壊れるかもしれないと思うと、どうしても話す事が出来ずにいた。


じわじわと壊れるか、一瞬で壊れるか。

辿り着く先は同じなのは十分理解している。


それなのに、包み隠さず話す事が私には出来ない。


――過ぎてしまった事。

もしかしたら、ミネアは笑って許してくれるかもしれない。


……なんて、それは都合のいい考えだろう。


状況や結果はどうであれ、ひとりの女性の気持ちを弄んだのだ。

真面目なミネアの事、私の裏の姿を知って幻滅するに違いない。



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