こくおうさまのすきなひと
扉の向こうからミネアの声がする。

違うのです!これは……!と、弁明するような言葉が聞こえた。

それを振り切るように、早足で自室へと向かう。


――全て私が悪い。

ミネアにそう行動させてしまうのも、私が至らないばかりでの事だ。


分かっていたじゃないか。

遅かれ早かれ、こうなってしまうと。

謝りもせず、真実を話そうともせず、そのままにしておいたのだから、修復など無理だって事は最初から分かり切っていた事じゃないか。

なのにどうしても言えずにいたのは、どこかで許してくれると思っていたからだ。


「馬鹿か、私は……」


暗く冷えた自室へと入り、扉を背にしてずるずるとしゃがみ込む。


父が亡くなった時も、自分にどんなに苦しい事があったとしても、私は常に気丈に振る舞ってきた。

涙ひとつ零さない。

それが国王になる自分にとって大切な事だと思っていたから。


けれど、どうだ今は。

たったあれだけ。
あの行動だけなのに、私の心は抉られるように痛む。


締めつけられるように苦しくて、息を吸うのもやっとなくらいに苦しい。

目頭が熱くなり、頬を伝う。




……嫌わないでくれ。

好きにならなくても構わない。
私と同様な想いを持たなくたっていい。



ただ拒絶するのだけは。



……お願いだ、どうか。



その願いは虚しく、私の心の中だけに響いた。
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