こくおうさまのすきなひと


「――……くおう、国王!」


どのくらいの時間が経ったであろうか。


誰もが寝静まる真夜中、背を預けていた扉がガンガンと強く叩かれて、その異常な大きさに我に返った。


名を呼ぶのはロバート。

このような深夜に辺りを気にせず、ここまで大きな声を上げるのは只事ではない。


……もしかして、まさか。


そんな言葉が頭をよぎる。


気持ちを切り替え、扉を開けた。


「どうした、こんな時間に何かあったのか」


「今日は自室にいらっしゃったのですね。あちらの部屋に伺ったのですが王妃様しかいらっしゃらず……。――いえ、今はそんな事を呑気に話している場合ではありません。たった今連絡が入りました。ついにフライムとの戦争が始まったようです」


「――何!?」


「アーネスト国境で待機していた我が連合軍にフライム軍側から攻撃を仕掛けて来たとの事。その情報を伝える為に、使いの騎士が戻ってきております。詳しくは執務室へ、今後の作戦を考えねばなりません」


「分かった、すぐに行こう」


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